― 首都圏1都3県の最新データから考える「選ばれる物件」のつくり方 ―
賃貸物件の競争力を高めるために、どのような設備を導入すればよいのでしょうか。
インターネット無料、宅配ボックス、オートロック、浴室乾燥機、追焚機能など、賃貸住宅にはさまざまな設備があります。
しかし、人気設備をすべて導入すれば必ず入居が決まるわけではありません。
物件が所在するエリア、募集賃料、間取り、築年数、想定する入居者によって必要な設備は異なります。
東京アセットテラスでは、賃貸物件の設備を考えるとき単に「設備が多いかどうか」ではなく、
検索時に候補から外されないか
内見時の比較で選ばれるか
入居後に長く住んでいただけるか
導入費用と将来の修理費用が見合うか
という四つの視点が大切だと考えています。
首都圏共通の「賃貸三種の神器」
まず、最新の検索データを確認してみます。
LIFULL HOME’Sが2025年の1年間に利用者から「必須条件」として選ばれた項目を集計した「住まい探しの絶対条件ランキング2026」では、
東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県のすべてで、上位3項目が共通していました。
1位は「バス・トイレ別」
2位は「室内洗濯機置場」
3位は「エアコン」
となっています。
一方、4位と5位には地域差があります。
東京都では「2階以上」が4位、「オートロック」が5位でした。
埼玉県と千葉県では「駐車場あり」が4位、神奈川県でも駐車場が5位に入っています。
都心部では防犯性や階数、郊外部では自動車を含めた生活利便性が重視されていることが分かります。
つまり、首都圏の賃貸住宅では、
バス・トイレ別、室内洗濯機置場、エアコン
が、付加価値設備というよりも候補に残るための基本条件になりつつあります。
築年数の古い物件では、バス・トイレを分ける工事や室内洗濯機置場の新設に大きな費用がかかることもあります。
そのため、工事費だけでなく工事後にどの程度家賃を維持できるのか、
空室期間を短縮できるのかまで検討する必要があります。
東京アセットテラスが考える首都圏・賃貸力アップ設備ランキング TOP10
第1位 エアコン
首都圏1都3県すべてで、エアコンは必須条件の3位です。
また、全国賃貸住宅新聞の2025年設備ランキングでも「この設備がなければ入居が決まりにくい設備」として
単身者向け、ファミリー向けの双方でエアコンが1位となっています。
ただし、エアコンは付いていればよいというものではありません。
極端に古い機種、室内の広さに合っていない機種、臭いや汚れが残っている機種は、
内見時の印象を下げることがあります。
特に夏の内見では、室内が暑くエアコンも効きにくければお客様が室内を見る時間そのものが短くなります。
単身者向け物件であれば主室の1台、ファミリー向けであればまずリビングへの設置を優先し、
募集賃料や競合物件に応じてほかの部屋への設置を検討するのが現実的です。
高額な内装工事を行う前に、エアコンの製造年、効き具合、清掃状態を確認することは費用対効果の高い空室対策です。
第2位 防犯設備
首都圏では、防犯設備の重要性が高くなっています。
2026年の都道府県別ランキングでは、オートロックは東京都で5位、埼玉県、千葉県、神奈川県で8位でした。
全国賃貸住宅新聞の「家賃が高くても入居が決まる設備」では、オートロックが単身者向け2位、ファミリー向け1位となっています。
新築物件であればオートロックを採用しやすい一方、既存のアパートでは建物全体の改修が必要となり費用が大きくなることがあります。
そのような場合は、
- TVモニター付きインターホン
- 防犯カメラ
- ディンプルキー
- 共用廊下やエントランスの照明
- 植栽や物陰の整理
などを組み合わせる方法があります。
大切なのは、オートロックという名称だけではありません。
建物の入口が暗い、集合ポストが壊れている、共用廊下に私物が放置されている状態では設備があっても安心感にはつながりません。
防犯設備と日常管理を一体で考えることが必要です。
第3位 独立洗面台
独立洗面台は東京都で6位、埼玉県、千葉県、神奈川県で7位に入っています。
以前は独立洗面台はファミリー向け物件の設備という印象もありました。
しかし現在は、単身者向けの1Kや1DKでも重視されることが増えています。
洗顔、歯磨き、身支度、化粧、ドライヤーなどを行う場所として浴室内の洗面台とは使い勝手が大きく異なります。
ただし、独立洗面台の新設には給排水管の移設が必要になることがあります。
無理に狭い場所へ設置すると、居室や脱衣スペースを圧迫してしまいます。
設置が難しい場合には既存の洗面スペースについて、
- 鏡を大きくする
- 照明を明るくする
- 収納棚を設ける
- 水栓や洗面ボウルを交換する
といった改善でも、内見時の印象を変えることができます。
第4位 駐車場・駐輪場
駐車場は、東京都では8位ですが、埼玉県と千葉県では4位、神奈川県では5位です。
首都圏といっても、都心部と郊外部では生活の仕方が異なります。
埼玉県、千葉県、神奈川県の郊外で駅から距離がある物件やファミリー向け物件を募集する場合、
宅配ボックスや浴室乾燥機よりも駐車場の方が物件選びに強く影響することがあります。
敷地内に駐車場を新設できなくても、近隣月極駐車場の空き状況を確認し募集時に案内できるようにしておくだけでも違います。
駐輪場についても単に自転車を置けるだけではなく、
- 放置自転車が整理されている
- 区画や番号が分かりやすい
- 雑草やごみがない
- 夜間でも暗くない
- 雨にぬれにくい
といった管理状態が重要です。
駐車場や駐輪場も共用部分の清掃と同じように、物件の管理品質が見える場所です。
第5位 高速インターネット無料
インターネット設備は、少し注意して考える必要があります。
LIFULL HOME’Sの2026年ランキングでは、
一般的な「インターネット使用料無料」は埼玉県16位、千葉県15位、神奈川県18位で、東京都では上位20位に入っていません。
一方、全国賃貸住宅新聞の2025年ランキングでは
「1Gbps以上の高速インターネット無料」が周辺相場より家賃が高くても入居が決まる設備として単身者向け1位、ファミリー向け2位となっています。
この二つの結果から見えるのは、
首都圏では単に「インターネット無料」と表示するだけでは十分な差別化にならない可能性があるということです。
重要なのは、
無料であることより、速度と安定性が確保されていること
です。
一棟全体で回線を共有し間になると極端に遅くなる設備では、入居後のクレームや退去理由になることがあります。
導入時には最大速度の表示だけでなく、各戸への接続方法、利用が集中する時間帯の状況、故障時の問い合わせ先まで確認することが大切です。
特に学生、若い社会人、在宅勤務をする方、動画視聴やオンラインゲームを利用する方が多い物件では効果が期待できます。
第6位 宅配ボックス
宅配ボックスは東京都の必須条件ランキングでは18位で、埼玉県、千葉県、神奈川県では上位20位に入っていません。
そのため、「宅配ボックスがなければ絶対に借りない」という設備ではないものの、
似た条件の物件を比較したときの決め手になりやすい設備と考えられます。
特に、日中不在にすることが多い単身者や共働き世帯との相性が良い設備です。
ただし設置する際には戸数に対してボックス数が少なすぎないか、大きな荷物にも対応できるか、
長期間荷物が放置された場合の管理方法はどうするかを決めておく必要があります。
壊れたまま使用できない宅配ボックスや荷物が入りっぱなしで使えない宅配ボックスは、
設備がない場合以上に不満を生むことがあります。
第7位 2口コンロ以上と使いやすいキッチン
2026年の首都圏ランキングでは、「コンロ二口以上」が
東京都11位、神奈川県12位、千葉県13位、埼玉県14位となっています。
単身者向け物件でも、自炊をする方にとって1口コンロと2口コンロの差は大きいものです。
ただし設備のグレードだけでなく、
- まな板を置ける作業スペース
- 冷蔵庫置場
- 電子レンジや炊飯器を置ける場所
- 収納量
- 油汚れを落としやすい仕上げ
まで考える必要があります。
LIFULLの新築賃貸物件調査でも、シングル向け物件で増加した設備の上位にカウンターキッチンなどキッチン関連設備が入っています。
高額なシステムキッチンを入れることが正解とは限りません。
間取りと家賃帯に合った、清潔で使いやすいキッチンにすることが重要です。
第8位 温水洗浄便座
温水洗浄便座は埼玉県13位、千葉県と神奈川県14位、東京都15位となっています。
上位設備と比べると順位は高くありませんが、比較的導入しやすく内見時にも分かりやすい設備です。
特に築年数の経過した物件では、便座を交換し便器や床、壁をきれいにするだけでもトイレ全体の印象が変わります。
一方、古い機種を無理に使い続けると水漏れや故障が発生することがあります。
設置後の交換のしやすさや、電源の位置も確認しておく必要があります。
第9位 浴室乾燥機・室内物干し
浴室乾燥機は東京都16位、埼玉県と神奈川県17位、千葉県18位です。
絶対条件としての順位は高くありませんが共働き世帯、夜間に洗濯する方、
外に洗濯物を干したくない方には便利な設備です。
既存物件で浴室乾燥機の設置費用が高い場合は、室内物干し金物や脱衣所の物干しスペースを設ける方法もあります。
追焚機能については首都圏各都県で9位から10位に入っている一方、
全国集計では前年より大きく順位を下げました。
LIFULLは、ガス代への意識や若年層を中心としたシャワー利用、時間を重視する生活スタイルなどが影響した可能性を挙げています。
そのため、単身者向けのコンパクト物件に一律で追焚機能を追加するのではなく、
ファミリー、カップル、高めの家賃帯など対象となる入居者に応じて判断するべき設備です。
第10位 24時間対応のゴミ置場
リクルートが首都圏の賃貸契約者を対象に行った調査では「24時間出せるゴミ置き場」は、
現在の設置率に比べ次の引っ越しで欲しいと考える割合が高い設備の一つでした。
同様の傾向は、無料インターネットやウォークインクローゼットにも見られます。
ただし、24時間ゴミ出しを可能にするためには建物の構造、自治体や収集業者との関係、臭い、害虫、分別違反などへの対応が必要です。
無理に24時間対応とするよりも、
- ゴミ置場を清潔に保つ
- 収集日を分かりやすく表示する
- カラスや小動物への対策をする
- 粗大ごみや分別違反を放置しない
- 定期清掃を行う
ことの方が、物件によっては重要です。
設備を設置するだけでなく、きちんと管理されて初めてその設備は物件の強みになります。
東京都心部・駅近の単身者向け
優先したいのはエアコン、防犯設備、高速インターネット、宅配ボックス、室内物干しです。
駐車場よりも夜間の安心感、不在時の荷物受け取り、通信環境などが比較材料になりやすいと考えられます。
埼玉県・千葉県・神奈川県郊外
駐車場、独立洗面台、エアコン、2口コンロ、ファミリーであれば追焚機能や収納を優先します。
駅から距離がある物件では、設備を増やす前に駐車場を確保できないかを確認することも大切です。
築年数が経過した単身者向けアパート
費用対効果を考えると、
- エアコンの交換・清掃
- TVモニター付きインターホン
- 温水洗浄便座
- 室内物干し
- 高速インターネット
- 照明と共用部分の改善
という順番が現実的です。
高額な全面改修を行わなくても、「古いけれど、必要なものが整い、きれいに管理されている物件」にすることで、十分に競争力を持たせられる場合があります。
2026年の調査では、「保証人不要」と「二人入居可」が前年から大きく順位を上げました。
物価や家賃の上昇、家族構成や生活スタイルの変化などにより、設備だけでなく入居しやすい募集条件も重視されていることが分かります。
もちろん、無条件に入居審査を緩和すればよいということではありません。
家賃保証会社の利用、入居人数、使用目的、緊急連絡先などを確認したうえで
物件に合った募集条件を設定することが大切です。
導入した設備は、募集情報へ正確に反映する
どれだけ良い設備を導入しても、不動産ポータルサイトの設備条件に登録されていなければ、検索結果に表示されないことがあります。
2026年の繁忙期に向けた業界記事でも、物件の特徴を示す検索条件の設定漏れを見直すことが、反響獲得の基本として挙げられています。
設備を導入した後は、
- 募集図面へ記載する
- ポータルサイトの設備項目へ登録する
- 写真を掲載する
- 仲介会社へ設備の特徴を伝える
- 通信速度や利用条件を正確に表示する
ところまで行って、初めて空室対策になります。
設備を増やすことではなく、選ばれる理由をつくる
賃貸物件の設備は、多ければ多いほどよいわけではありません。
単身者向け5万円台の物件とファミリー向け15万円の物件では、求められる設備もかけられる費用も異なります。
重要なのは、
この設備を入れることで、誰に選んでもらえるのか
家賃を維持できるのか
空室期間を短縮できるのか
故障したときに適切に対応できるのか
まで考えることです。
設備を導入して終わりではありません。
エアコンが故障すれば早く交換する。
宅配ボックスが使えなければ修理する。
防犯カメラや照明が切れていれば対応する。
ゴミ置場を清潔に保つ。
そのような日々の管理があってこそ、設備は本当の意味で物件の価値になります。
東京アセットテラスでは、周辺の競合物件、募集賃料、入居者層、建物の状態、
今後の修繕計画を確認しながら、オーナー様の物件にとって優先順位の高い設備をご提案してまいります。
流行している設備をすべて取り入れるのではなく、
その物件が選ばれるために本当に必要な設備を見極める。
それが、これからの賃貸経営に求められる設備投資であると東京アセットテラスは考えています。
※本稿は2026年7月時点で公表されている調査を参考に作成しています。設備需要は、物件所在地、駅距離、間取り、賃料、入居者属性などによって異なります。導入にあたっては、工事費だけでなく、保守費用、交換費用、空室期間、家賃への反映可能性を含めてご検討ください。
