― 建てる・買う・受け継ぐ。「何を保有し、どう運用するか」を考える ―
「不動産投資」と一言でいっても、その目的や始め方は人によって異なります。
土地を購入してアパートを建築する方もいれば、
新築の一棟アパートや区分マンションを購入する方、中古物件を取得して修繕しながら運用する方もいます。
また、純粋な投資目的ではなくご先祖様から受け継いだ土地を守り、
次の世代へ引き継ぐために土地活用として賃貸住宅を建築する地主様もいらっしゃいます。
どの方法が正しく、どの方法が間違っているということではありません。
大切なのは、まず、
「何のために不動産を所有するのか」
を明確にすることです。
毎月の収入を増やしたいのか。
将来の年金代わりにしたいのか。
土地を手放さずに維持したいのか。
相続後も家族が管理しやすい資産にしたいのか。
将来的な売却益も含めて資産形成をしたいのか。
目的が違えば、選ぶべき物件も、資金の借り方も、運用方法も変わります。
土地、建築費、金利が同時に動く時代
現在の不動産市場は、以前と比べて判断が難しくなっています。
国土交通省の2026年地価公示では、全国平均の全用途・住宅地・商業地がいずれも5年連続で上昇しました。
東京圏と大阪圏では上昇幅も拡大しています。
一方、地方圏でも全体として上昇傾向は続いているものの、地域による差は大きくなっています。
建築費についても、国土交通省が公表した2026年3月の建設工事費デフレーターでは、
建築総合が135.0ポイントとなり前年同月から6.4ポイント上昇しています。
この指標が個別のアパート建築見積額を直接示すものではありませんが、
建築費全体に強い上昇圧力がかかっていることが分かります。
さらに日本銀行は2026年6月、無担保コールレートの誘導目標を1.0%程度へ引き上げました。
今後も経済・物価・金融情勢に応じて政策金利を引き上げる可能性を示しています。
政策金利と個別の不動産投資ローン金利は同じではありませんが、
借入金利を将来も変わらないものとして考えることはできません。
つまり現在は、
土地を買う費用
建物を建てる費用
借入れをする費用
のすべてを慎重に考えなければならない時代です。
だからこそ、単に「利回りが高いから」という理由だけで物件を選ぶのではなく、
何を買うのか、どのように運用するのかが、これまで以上に重要になっています。
利回りは大切ですが、利回りだけでは物件の中身は分かりません
不動産投資を検討するとき、多くの方が最初に確認するのが利回りです。
例えば、物件価格1億円に対して年間家賃収入が800万円であれば、表面利回りは8%です。
分かりやすく物件同士を比較するためには大切な数字です。
しかし、表面利回りだけでは、次のようなことは分かりません。
その家賃で本当に入居が続くのか。
退去後も同じ家賃で募集できるのか。
今後、どの程度の修繕が必要になるのか。
固定資産税、保険料、管理費、清掃費はいくらかかるのか。
借入金の元金と利息を支払った後、手元にいくら残るのか。
将来売却したいときに、次の買主が見つかるのか。
利回りが高い物件には、それだけの理由があることもあります。
駅から遠い、賃貸需要が弱い、建物が古い、修繕費がかかる、
融資期間が短い、再建築や法令上の問題がある、売却しにくいなど、
数字の裏側にリスクが隠れている場合があります。
反対に表面利回りが多少低くても、入居需要が安定し、修繕履歴が明確で、
金融機関から評価されやすく、将来売却しやすい物件であれば、長期的には安定した資産になる可能性があります。
私たちは、利回りは物件を判断するための入口であって、結論ではないと考えています。
所有している土地にアパートを建築する場合、
新たに土地を購入する必要がないため事業計画を組み立てやすい面があります。
しかし、土地代の支払いがないからといってその土地の価値がゼロというわけではありません。
アパートを建てれば、その土地は長期間にわたり賃貸住宅事業に使用されます。
建築後に別の用途へ変更したり、土地だけを売却したりすることは難しくなります。
そのため、建築会社から提示された収支計画だけでなく、
周辺にどのような入居者がいるのか
単身者向けとファミリー向けのどちらが適しているのか
近隣で今後も賃貸需要が続くのか
10年後、20年後にどの程度の家賃が見込めるのか
大規模修繕と借入返済が重なる時期はないか
次の世代が管理や返済を引き継げるのか
まで考える必要があります。
土地を守るために建てたアパートが、空室や借入返済によって土地を苦しめることになってはいけません。
建物を建てることが目的ではなく、その土地を長く安定して運用することが目的です。
新築物件は当初の修繕計画を比較的立てやすく、
新しい設備や間取りによって入居者を募集しやすいことが強みです。
一方で現在は土地価格と建築費が上昇しているため、販売価格も高くなっています。
新築というだけで安心するのではなく、販売価格に対して家賃設定が無理をしていないかを確認しなければなりません。
新築時には入居が決まる家賃でも、最初の退去後に同じ家賃で再募集できるとは限りません。
また、購入価格には土地代、建築費だけでなく、販売会社の事業費や利益なども含まれています。
そのため、
新築時の想定利回りではなく、数年後に中古物件となった後も運用できるか
という視点が必要です。
中古物件には現在の家賃、入居状況、過去の運用実績を確認しながら購入できるという利点があります。
立地や建物の状態が良ければ新築より価格を抑えながら、安定した賃貸経営を始められることもあります。
修繕やリノベーションによって、物件の魅力や収益性を高められる可能性もあります。
その一方で、中古物件は表面上の利回りだけでなく、
屋上防水や外壁工事の実施時期
給排水管や受水槽などの状態
空室の原状回復費用
入居中の部屋の実際の契約条件
滞納や入居者間トラブルの有無
建築確認、検査済証、増改築の履歴
接道や再建築などの法令上の問題
まで確認する必要があります。
購入直後に大規模修繕が必要になれば、購入時に想定していた利回りは大きく変わります。
中古物件の場合は、現在いくら収入があるかだけではなく、これからいくら支出が発生するかを見ることが重要です。
不動産の価値は、購入後の運用によって変わります
不動産投資は、物件を購入して終わるものではありません。
購入してからが、本当の賃貸経営の始まりです。
適正な賃料を設定し、空室を早く埋め、入居者様に長く住んでいただく。
共用部分をきれいに保ち、不具合を早期に発見し、必要な修繕を適切な時期に行う。
修繕費が高騰する中でも、再利用できるものは再利用し、削ってはいけない費用は削らない。
こうした日々の運用によって同じような立地、築年数、間取りの物件でも
稼働率や修繕費、入居者満足度、将来の売却価格に差が生まれます。
利回りの良い物件を探すことも大切ですが、購入した物件を、
「選ばれる物件」
「長く住んでいただける物件」
「次の買主にも評価される物件」
に育てていくことも、同じくらい大切です。
一番難しいのは、やはり資金調達です
不動産投資において、物件選びと同じくらい難しいのが資金調達です。
借入先、金利、返済期間、自己資金の割合によって購入後のキャッシュフローは大きく変わります。
同じ物件を同じ価格で購入しても、35年で借りる場合と20年で借りる場合では毎月の返済額が違います。
変動金利か固定金利かによっても、将来のリスクは異なります。
大切なのは、「いくら借りられるか」ではなく、「どの条件であれば無理なく返し続けられるか」です。
まず考えられるのが、地方銀行、信用金庫、都市銀行などからの融資です。
金融機関によって、対象地域、物件種別、建物構造、築年数、借入期間、自己資金の考え方は異なります。
また、ホームページ上に「不動産投資ローン」という商品名がなくても、
法人や個人事業主の不動産賃貸事業として個別に相談できる場合があります。
そのため公開されている金利だけで判断するのではなく、
既存取引のある金融機関や物件所在地を営業地域とする金融機関へ事業計画を持って相談することが大切です。
銀行の投資用不動産ローンの一例としてスルガ銀行では、
新築・中古のアパートやマンション、区分所有物件、オフィス、一棟ビル、借換えなどを対象とし、最長35年の商品を公表しています。
同時に、審査資料として収入、金融資産、他社借入れ、レントロール、図面、新築の場合は工事見積書や事業計画書などを求めています。
これは融資審査が物件の利回りだけではなく、借主の資産背景と事業全体を見て行われることを示しています。
新築の賃貸住宅については、一定の条件を満たす場合住宅金融支援機構の融資も選択肢になります。
同機構には、子育て世帯に必要な広さや省エネルギー性能などの技術基準を満たす賃貸住宅を対象とした建設融資があり、長期固定金利を特徴としています。
準耐火構造の木造軸組工法や2×4工法などでは、条件により最長40年の返済期間が設定されています。
ただしすべてのアパート建築に利用できるわけではなく、建物性能、立地、申込者などに条件があります。
金利上昇リスクを抑えたい地主様や長期間にわたり安定した賃貸経営を行いたい方は、
建築計画の初期段階で利用条件を確認する価値があります。
銀行で融資対象になりにくい築古物件、新設法人、特殊な物件などでは、
ノンバンクや不動産担保融資を取り扱う金融会社が選択肢になる場合があります。
ただし、銀行融資と比べると金利や手数料が高くなることがあります。
一例として、新生インベストメント&ファイナンスが公表している不動産購入ローンでは、
築古物件や新設法人も検討対象とし、最長35年の借入期間を設定しています。
一方、2026年4月時点の公表条件では変動金利は年3.20%から4.75%、
事務手数料は融資金額の1.10%から2.20%、期限前返済違約金は返済元金の2.00%です。
これはあくまで一社一商品の例ですが、ノンバンクを利用する場合は金利だけでなく事務手数料や繰上返済時の費用まで含めて比較する必要があります。
「銀行で借りられないから利用する」のではなく、
購入後の収益から利息と費用を支払っても十分な資金が残るのか、
将来銀行へ借り換えられなかった場合でも保有を続けられるのかを確認しなければなりません。
金融機関から融資承認が出ると、「銀行が認めた物件だから大丈夫」と思ってしまうことがあります。
しかし、金融機関の審査と投資家にとっての事業採算は同じではありません。
融資を受けられたとしても、
空室が複数発生した場合
募集家賃が下がった場合
金利が上昇した場合
給湯器やエアコンの交換が重なった場合
外壁、防水、給排水設備の工事が発生した場合
にも返済を続けられるかを確認する必要があります。
購入前には満室の収支だけでなく、空室、家賃下落、金利上昇、修繕発生など複数の条件で収支を試算することが大切です。
また、借換えや短期間での売却を前提とした計画は借換えができない、想定価格で売却できない場合の対応も決めておかなければなりません。
融資が出る物件ではなく、状況が変わっても運用を続けられる物件を選ぶ。
これが、金利のある時代の不動産投資には必要です。
資金使途に合った融資を利用すること
住宅ローンと不動産投資ローンは、目的が異なります。
例えば住宅金融支援機構は、フラット35について投資用物件の取得資金には利用できないことを明記しています。
第三者へ賃貸するなどの目的外利用が判明した場合は、借入金の全額を一括返済することになると注意喚起しています。
金利が低いからといって、自宅用の住宅ローンを投資用物件へ流用することはできません。
物件の実際の利用目的に合った融資を利用し契約内容を守ることは不動産経営を長く続けるための大前提です。
購入前に確認したいのは「最悪の場合でも持てるか」
物件を購入する前には、利回りと融資条件を並べるだけでなく少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 空室が発生しても返済できるか
- 金利が上昇しても資金が残るか
- 購入直後に修繕が発生しても対応できる自己資金があるか
- 大規模修繕の時期と借入返済の時期が重ならないか
- 将来売却するとき、借入残高以上で売却できる可能性があるか
- 売却せずに次の世代へ引き継ぐ場合、残る借入れと修繕負担を説明できるか
不動産投資では、想定どおりにいった場合の利益を計算することは簡単です。
本当に重要なのは、想定どおりにいかなかった場合でも、物件を守ることができるかを考えることです。
売買と管理の両方を知っているからこそできる提案
東京アセットテラスでは、賃貸管理だけでなく投資用不動産の売買にも積極的に取り組んでいます。
私たちが大切にしているのは、物件を購入していただくことだけではありません。
購入前には立地、賃貸需要、建物状態、修繕履歴、融資条件、将来の売却可能性を確認する。
購入後には適切な募集、日常清掃、入居者対応、修繕、収支管理を行う。
そして必要な時期が来たら保有を続けるのか、売却するのか、建て替えるのかを検討する。
不動産は売買、融資、賃貸募集、建物管理、修繕、売却まで、すべてがつながっています。
だからこそ私たちは利回りの数字だけを見せるのではなく、
なぜこの物件を買うのか
誰に貸すのか
どのように維持するのか
将来どのように手放す、または引き継ぐのか
まで考えたご提案を大切にしています。
利回りも、もちろん重要です。
しかし、土地価格、建築費、修繕費、金利が上昇している現在は
利回り以上に、何を買い、誰と運用し、どのように資産として残していくのかが問われています。
不動産を購入することではなく、不動産を正しく運用し続けること。
それが、これからの時代に大切な不動産投資であると、東京アセットテラスは考えています。
※本稿は2026年7月時点の公表情報を参考に作成しています。融資商品の金利、融資期間、対象地域、審査条件等は変更されることがあります。実際の投資判断にあたっては、最新の商品内容を金融機関へ確認し、税務・法務・相続については税理士、司法書士、弁護士等の専門家へご相談ください。
