― 首都圏と地方の違い、クロスメイクなどを活用した賢い修繕方法 ―
賃貸経営を続けていくうえで、設備の故障や退去後の原状回復、建物共用部分の修繕を避けることはできません。
しかし昨今、オーナー様からも、
「以前より修繕費が高くなった」
「同じような工事なのに、見積金額が上がっている」
「どこまで修繕するべきか判断が難しい」
というご相談をいただく機会が増えています。
実際に、修繕費の上昇は単なる感覚ではありません。
国土交通省が公表した2026年3月適用の公共工事設計労務単価は、
全国全職種で前年度比4.5%上昇し、14年連続の引き上げとなりました。
公共工事の積算用単価であり、民間賃貸住宅の修繕価格そのものではありませんが、
職人の人件費が継続的に上昇していることを示す重要な指標です。
また、壁紙や床材などを取り扱うサンゲツは、原材料費や製造費、物流費の上昇を理由として、
2026年7月1日受注分から壁装材・床材・副資材などの取引価格を18%から30%程度改定すると発表しています。
これも、そのまま工事費が同率で上がるという意味ではありませんが、
修繕に使用する材料価格にも強い上昇圧力がかかっていることが分かります。
首都圏の修繕費は、地方より必ず高いのでしょうか
修繕費には地域差があります。
国土交通省の2026年3月適用単価を見ると、内装工の1日当たりの労務単価は、
東京都が3万4,400円、千葉県が3万4,100円、埼玉県と神奈川県が3万4,800円となっています。
一方、福島県は3万1,000円、青森県は2万8,100円、鳥取県は2万8,300円です。
ただし、静岡県は4万400円と東京都を上回っており、必ずしも「地方だから安い」と単純に判断できるわけではありません。
なお、これらは公共工事用の労務単価であり、民間工事の見積価格とは異なります。
首都圏では人件費に加えて駐車料金、交通渋滞による移動時間、マンションごとの搬入規則、作業時間の制限などが工事費に影響します。
一方、地方では職人の基本単価が比較的低い地域があるものの専門業者が少ない地域では、
遠方からの出張費や最低工事料金、資材の運搬費が加わることがあります。
そのため、修繕費を比較するときは、単価だけを見るのではなく、
- 施工範囲
- 下地補修の有無
- 廃材処分費
- 駐車料金や出張費
- 養生・清掃費
- 工事後の保証
- 追加費用が発生する条件
まで、同じ条件で比較することが重要です。
見積金額が安く見えても、必要な項目が入っていなければ、工事開始後に追加費用が発生します。
私たちは、
最初の見積金額だけでなく、最終的にいくらかかるのかまで確認することが、適切な修繕管理である
と考えています。
壁紙を張り替えずに再生する「クロスメイク」
退去後の原状回復で大きな割合を占めるのが、壁紙、いわゆるクロスの工事です。
壁紙に多少の汚れや黄ばみがあるだけでも、これまでは全面張替えを行うことが一般的でした。
しかし、既存の壁紙を剥がさず、その上から専用の染色剤を塗布して再生する「クロスメイク」という方法があります。
クロスメイクの提供元では、一般的な張替えと比較して費用を半額程度に抑えられる場合があり、
6畳程度の部屋であれば、張替えに6時間から7時間程度かかるところを、2時間から3時間程度で施工できる目安を示しています。
既存の壁紙を剥がさないため、廃材がほとんど発生しないことも特徴です。
ただし、実際の金額や施工時間は、部屋の広さや壁紙の状態、施工地域によって異なります。
クロスメイクが適しているのは、壁紙そのものには大きな損傷がなく、
- 日焼けや経年による黄ばみ
- 手垢や軽度の生活汚れ
- 小さな穴や傷
- 全体的なくすみ
などをきれいにしたい場合です。
一方、壁紙が大きく剥がれている場合や、下地が傷んでいる場合、
著しいタバコのヤニ汚れがある場合には、張替えが必要になることがあります。
施工元も、古い壁紙や汚れが強い壁紙では二度塗りが必要になり、状態によっては施工できない場合があるとしています。
また、漏水や結露によってカビが発生している場合は、表面をきれいにするだけでは解決しません。
先に漏水や換気、結露の原因を確認しなければ、施工後に再びカビが発生する可能性があります。
クロスメイクは、何でも安く直せる万能な方法ではありません。
しかし、壁紙の状態を正しく確認し、適している部屋に使用すれば、見た目を回復させながら、
費用と工期、廃材を抑えられる有効な選択肢となります。
1.最初から「交換する」と決めない
設備や内装に不具合が見つかった場合、すぐに新品へ交換するのではなく、
清掃で回復できるのか、補修できるのか、表面だけ再生できるのか、それとも交換が必要なのか
という順番で検討することが大切です。
例えば、壁紙はクリーニングやクロスメイク、床は部分補修やワックス、建具は調整やシート施工で再利用できることがあります。
ただし、無理に補修を続けた結果、仕上がりが悪くなったり、短期間で再修繕が必要になったりするのであれば、
最初から交換した方が結果的に安くなる場合もあります。
2.設備全体ではなく、部品単位で確認する
水栓から水が漏れているからといって、水栓全体を交換しなければならないとは限りません。
パッキンやカートリッジ、シャワーホースなど、部品の交換で直る場合があります。
トイレについても、便器本体ではなく、便座や内部部品だけの交換で対応できることがあります。
換気扇、照明、ドア、収納扉なども同様です。
故障している部分を特定せずに一式交換をすると、不要な費用が発生します。
反対に、古い設備へ何度も部品交換を繰り返すのであれば、全体交換した方が今後の故障リスクを減らせる場合があります。
大切なのは、今回の工事費だけでなく、今後何年間使用できるのかまで考えることです。
3.物件ごとの標準仕様を決めておく
同じ建物で、退去のたびに異なる壁紙や床材、照明器具を使用すると、
材料の選定や発注に時間がかかり、余った材料も再利用しにくくなります。
物件ごとに使用する壁紙、クッションフロア、フロアタイル、照明器具、水栓など、
ある程度統一しておけば発注が早くなり施工業者も作業しやすくなります。
また玄関や廊下、洗面所、スイッチ周辺など汚れや傷が付きやすい場所には、
表面強化や防汚性能のある壁紙を使用する方法もあります。
材料費が少し高くても、次回以降の補修を減らせるのであれば長期的には有効です。
4.小さな工事をまとめる
一つの建物で複数の修繕予定がある場合それぞれ別の日に業者を呼ぶよりも、
可能な範囲でまとめて施工した方が出張費や駐車料金、最低工事料金を抑えられることがあります。
退去後すぐに室内を確認し、
「クロス工事が終わってから設備不良が見つかった」
「清掃後に追加の補修が必要になった」
ということがないよう、工事前に修繕箇所をできるだけ洗い出すことも重要です。
修繕費の発生漏れを防ぐだけでなく、業者の再訪問や募集開始の遅れを減らすことにもつながります。
5.水漏れや安全に関わる修繕は先延ばしにしない
費用を抑えることと、必要な修繕を先送りすることは違います。
漏水、防水、給排水管、電気設備、鍵、手すり、外壁の剥離など安全性や建物の劣化に関係する不具合は、
早めに対応しなければ被害が広がる可能性があります。
数万円で直せた不具合を放置した結果、下階への漏水や壁・床の腐食が発生し数十万円、場合によってはそれ以上の工事になることもあります。
削ってよい費用と、削ってはいけない費用を見極めることが、管理会社の大切な役割です。
修繕費を安くすることが、目的ではありません
東京アセットテラスが考える修繕の目的は、単に工事費を安くすることではありません。
入居を検討されるお客様に、
「きれいに手入れされている」
「安心して住めそう」
「きちんと管理されている」
と感じていただき、物件を選んでいただくことが本来の目的です。
例えば、家賃5万円のお部屋で3万円の修繕費を削減できたとしても、
それによって室内の印象が悪くなり、仮に入居が1か月遅れれば経済的には節約になりません。
一方、清掃やクロスメイク、部分補修で張替えと同等の印象に仕上げられるのであれば、必要のない全面交換を行う理由もありません。
私たちは、
入居者様の安全と生活に必要な修繕
物件が選ばれるために必要な修繕
将来の大きな出費を防ぐための修繕
を優先しながら再利用できるものは再利用し、
修理できるものは修理することがこれからの賃貸管理に必要だと考えています。
高騰する修繕費に対してただ工事を減らすのではなく、
物件の状態、募集賃料、入居者層、今後の保有期間まで考え最も効果の高い方法をご提案する。
それが、東京アセットテラスの目指す賃貸管理です。
